大学図書館員は、機関における研究公正を守るうえで重要な役割を担っています。情報へのアクセスを支援し、研究公正の複雑な側面についての知識を共有し、倫理的な行動とベストプラクティスについて研究者に必要な力を身につけさせ、導くことで、研究者を支えています。本稿では、Dror Kolodkin-Gal博士*が、図書館員がその知識とツールへのアクセスを活かして研究公正と画像の信頼性を推進し、機関全体でベストプラクティスを広める方法を解説します。
大学図書館員は、研究公正担当者(RIO)と日常的に協力し、機関の研究者が発表する論文の信頼性を守り、倫理指針が遵守されるようにします。図書館員はそのために研究公正に関するベストプラクティスを積極的に共有しており、そのためには最新の技術、指針、出版手続きを常に把握しておく必要があります[1]。
発表される研究の量が増え続け、より高度な技術が利用可能になり、新たに出現するペーパーミル(論文工場)[2]によって誤情報のリスクが高まるなか、図書館員には、研究公正のあらゆる領域を推進する責任がますます求められています。
画像の信頼性
Science誌編集長のHolden Thorp氏は、近年「研究コミュニティは、科学論文における画像の改変に関わる問題への懸念を強めている」と指摘しています[3]。これに対処するため、図書館員は画像の信頼性の重要性を考慮し、研究者に提供する包括的な支援に関連リソースを組み込む必要があります。
研究者は研究結果を伝えるために画像や図を用いることが多く、それらはすべて、論文の記述を裏付け、結果の再現性を確保するために正確でなければなりません。しかし研究者は数百枚もの似た画像を確認することになり、サブ画像どうしの比較は数十万回に及ぶこともあるため、目視でこれらの画像を効果的にチェックするのは難しい場合があります。難しいとはいえ、画像の信頼性の確保は出版において広く見られる課題です。ライフサイエンス分野の原稿のおよそ3分の1で、画像の問題が指摘されています[4]。
研究のほかの領域で行っているのと同じように、ベストプラクティスを共有し、役立つリソースを提供することで、図書館員は、研究者が画像の信頼性を積極的に高め、出版前に問題を回避できるよう支援できます。
変化を推進する
図書館員は学術機関の中心的な立場にあり、教員、学生、研究者と日常的に協力しているため、機関全体で画像の信頼性を推進するのに非常に適しています。学術資料を使いこなす専門性、研究方法論への理解、出版基準に関する知識により、研究者に効果的な助言を行うことができます。
ベストプラクティスやツールをどのような方法で提供するかは、学術機関とそのニーズによって異なります。たとえば、Australian Academy of ScienceとSpringer Natureによるある調査では、回答した研究者の半数が研究公正の研修を必須にすべきだと答え、73%が研究職に就く人には必須にすべきだと付け加えました[5]。ワークショップ、セミナー、個別支援を提供することで、図書館員はこうした研修を効果的に実施し、研究方法論、画像の撮影と保存のベストプラクティス、盗用の防止といったテーマについて研究者を教育できるでしょう。
African University of Science and Technologyの図書館サービス責任者であるOnyebuchi Ekpolomo氏も、研究活動へのテクノロジーの導入を推進するうえでの図書館員の重要性を強調し、「図書館員は技術進歩の最前線に立ち、科学コミュニティに役立つ革新的なツールを常に探求しています」と述べています[6]。そのため図書館員は、研究公正のさまざまな領域に役立つ技術を見つけてその利点を理解し、研究者に有用なツールに慣れ親しむよう促すのに適した立場にあります。
画像の信頼性について言えば、Proofig AI[7]のような自動ツールを使うと、研究者はAIを用いて大量の画像をすばやく解析できます。各画像をその画像自体や論文内のほかの画像と比較し、研究者が確認すべき潜在的な問題を指摘します。RIOをはじめとする研究公正に関わる担当者も、テクノロジーを活用して、出版予定の論文がより広く共有される前にレビューできます。AIツールを機関の投稿前プロセスに組み込むことは、研究者がきわめて高い信頼性を備えた確かな研究成果を投稿するのに役立つだけでなく、図書館員、RIO、その他の関係者に、機関の信頼性と評判を守るためのツールを提供します。
機関全体で研究公正の実践に小さく実行可能な変化を取り入れることは、信頼性を保ち、評判の毀損を防ぐうえで極めて重要です。University of Edinburghで研究の改善と公正を担当する学術リーダーのMichael MacLeod氏は、「すべての科学者の研究の質をほんの少しでも高められれば、研究公正への影響の総和は非常に大きなものになるだろう」と端的にまとめています[8]。
画像の信頼性について研究者を効果的に支援するのは、図書館員にとって難しい仕事です。しかし、積極的な対策を講じることで、ベストプラクティスを改善し、意図しない誤りによる画像の信頼性の問題が含まれる可能性を減らすことができます[9]。画像の信頼性に関するベストプラクティスを共有し、出版前に問題を特定するためのAIソリューションを推進することで、図書館員は、研究者が適切な倫理基準と公正さを守れるよう支援するうえで重要な役割を果たし、所属機関の評判に良い影響を与えることができます。
- https://www.linkedin.com/pulse/vital-role-librarians-supporting-promoting-scientific-ekpolomo-liojf/
- https://www.nature.com/articles/d41586-021-00733-5
- https://www.science.org/doi/10.1126/science.adn7530
- https://ukrio.org/ukrio-resources/expert-interviews/jana-christopher-image-integrity-analyst/
- https://group.springernature.com/gp/group/media/press-releases/australian-researchers-want-research-integrity-training/23130342
- https://www.linkedin.com/pulse/vital-role-librarians-supporting-promoting-scientific-ekpolomo-liojf/
- https://www.proofig.com/ja/
- https://www.nature.com/articles/d41586-021-03493-4
- https://ukrio.org/ukrio-resources/expert-interviews/jana-christopher-image-integrity-analyst/